【はり新の囲炉裏と藁灰の話】

囲炉裏の灰にも、先代のこだわりがあります

店内奥の囲炉裏席は、昭和56年(1981年)の改装で設けられました。

もともとは、江戸時代から続く両替商時代の三間続きの座敷の一室だった場所です。その東側の一室を板張りに改め、掘りごたつ式の囲炉裏席として生まれ変わりました。

囲炉裏越しに眺める庭は、奈良の名庭師・故小山潔氏が整えたものです。四季折々に表情を変える庭は、囲炉裏席ならではの景色となっています。


市販品ではない「藁灰」

囲炉裏に敷いている灰は、市販のものではありません。

当店で使っているのは、稲わらを焼いて作る**藁灰(わらばい)**です。

この藁灰は、奈良県五條市で兼業農家を営む従兄弟が手間をかけて作ってくれています。

藁灰は粒子が細かく、見た目も美しく、古くから囲炉裏や火鉢、茶道の炉などにも用いられてきました。

先代は「囲炉裏には藁灰」と考え、この灰を使い続けることにこだわっていました。

その理由を詳しく語ることはありませんでしたが、見た目の美しさや、囲炉裏の雰囲気を大切にしていたのだと思います。

私もその思いを受け継ぎ、現在も藁灰を使い続けています。


現在は火を入れていません

囲炉裏をご覧になって、

「炭に火を入れるのですか。」

と尋ねられることがあります。

現在、囲炉裏には炭を置いていますが、火は入れていません。

換気設備の問題や一酸化炭素への配慮、防火や安全面、そして維持管理のことを総合的に考え、現在の形としております。

火はなくても、囲炉裏は当店の空間を象徴する大切な設えです。

そして、その中央には先代から受け継いだ藁灰が今も静かに敷かれています。


大切に使い続けたい藁灰

藁灰を作ってくれている従兄弟も高齢になりました。

現在も元気に農業を続けていますが、この藁灰をいつまでも作ってもらえるとは限りません。

そのため、今ある藁灰を大切に使いながら、先代から受け継いだ囲炉裏の景色を守っていきたいと思っています。

 お食事の際には、庭や囲炉裏だけでなく、その囲炉裏を支える藁灰にも、少し目を向けていただければ幸いです。