【はり新の玄関に残る春日カナンボ石】

当店の玄関に敷かれている石畳は、「春日カナンボ石」と呼ばれる奈良ゆかりの石です。

現在はお客様をお迎えする玄関庭の一部となっていますが、もともとは当家の母屋と別棟を結ぶ通路に敷かれていました。

私が子供の頃、その通路は家族しか通らない場所でした。

当時は石の価値など知るはずもなく、カラーチョークで落書きをして遊んだ記憶があります。

平成初期、建物の大規模な改築が行われた際に、この石は現在の玄関庭へ移されました。

庭づくりを担当されたのは庭師の故・小山潔氏です。

石は一枚ずつ丁寧に掘り出され、現在の石畳として据え直されました。

母の話によると、石によってはひとつの石の据え付けに丸一日かかることもあったそうです。

石の形や高さはそれぞれ異なるため、歩きやすさや全体のバランスを見ながら作業が進められたのでしょう。

現在も庭の手入れは、小山氏のお弟子さんの流れをくむ庭師さんにお願いしています。

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数年前には、若い庭師さんが玄関先で石畳を熱心に見ていることがありました。

声を掛けると、「親方から、はり新のカナンボ石の石畳を見てくるよう言われた」と話してくれました。

専門の方がわざわざ見学に来られることに驚きましたが、それだけ評価されている仕事なのだと知る機会にもなりました。

梅雨の時期になると、石畳や苔は雨を含み、普段とは少し違った表情を見せます。

奈良町を散策される機会がありましたら、お料理だけでなく、玄関の石畳にも目を向けていただければ幸いです。

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